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青酸クリームソーダ

2008年09月05日



 本日も文芸誌『ファウスト Vol.7』の感想を。
 昨日は佐藤友哉氏の短編小説の感想を書いたが、今日は長編の方を。

 タイトルは『青酸クリームソーダ <鏡家サーガ>入門編』。
 サブ・タイトルにもあるように、大好きな鏡家サーガの最新作である。
 しかも長編。鏡家シリーズの短編作品は色々な雑誌にて発表されているが、
 書き下ろしの長編作は『鏡姉妹の飛ぶ教室』以来。数年ぶり。当然、期待しまくり。
 この作品が読めるから『ファウスト』の発売を心待ちしていたのである。
 原稿用紙500枚以上の分量なので読み終えるまでに3日ほどかかったが、
 読み終えた後に思った素直な感想を記そう。

 薄い。何というか薄い。
 面白くないワケではない。いや寧ろ普通に面白い作品だった。
 でも鏡家サーガとは思えないほど薄い内容。

 本作の主人公は鏡家三男の公彦。『フリッカー式』以来の再登板。
 以来と書いたが、時系列的には『フリッカー』以前。まぁ、当然だけど。
 冒頭で鏡公彦が、偶然、殺人現場を目撃してしまい、
 その犯人である少女に半拉致状態で彼女の自宅に連れて行かれる所までは、
 割と「おお、良い展開ではないか」と思った。
 だが、その後の展開が普通過ぎるというか。
 いや、決して普通ではない。
 犯人の少女に爆弾を体内に埋め込まれ、
 一週間以内に私の犯行動機を当ててみろ、と、無茶な要求をされたり、
 全身包帯塗れの男が出てきたり、鏡家の面々が登場したり、
 大量に人が死に、暗澹としていて救いが無いラストも悪意が篭っていて、
 だから、決して普通ではないと思う。
 この作品は紛れも無く僕が愛した『鏡家サーガ』だったと思う。
 でも、重ねて言うが、薄い。
 こんなに濃い内容のに、何が薄く感じるのか読み終えた後に考えてみた。

 熱さが感じられない所だろうか?

 デビュー作の『フリッカー式』を読んだ時には、
 火傷しそうなほど激しい〝熱さ〟を感じた。
 それは続編の『エナメルを塗った魂の比重』でも変わらず、
 そして『水没ピアノ』では心を焦がされるような炎上を味わった。
 僕にとって鏡家サーガは熱さに漲ったシリーズだった。
(勘違いされそうだが、ここでいう〝熱さ〟というのは『熱血』という意味ではなく、
 作者の劣等感や攻撃的な感情が作品に満ち溢れているという意味である)
 そういう意味で今回の作品は、良くも悪くも、
 ライト・ノベル的なエンタメ手法に則られた作品だったように思う。
 主人公の饒舌な独白と個々のキャラクタが交わす会話、等、
 そう考えてみれば、あらゆる所に『ラノベ』要素が満載だったではないか。
 ライト・ノベル大好きだから、最初から熱さを求めず、ラノベとして読んでいれば、
 きっと、もっと評価は高かったかもしれない。悲しいかな期待値が高すぎた。
(ちなみに『鏡姉妹の飛ぶ教室』は最初からライト・ノベルとして読んでいたから、
 後半の怒涛の展開が凄く楽しめた記憶がある)


 享楽的日常
(ブース☆キッス・公式ホームページ)

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